JAN/FEB '03
 さすがに読者のツボを押さえているというか、Myles Rockwellの引退特集が組まれています。彼の成績を見るとコースの得意、不得意によってリザルトが大きく異なるため、ユーロ出身ライダーの陰に隠れてしまいがちでした。また、プロの宿命で「優勝=強さの証」と判断されると、怪我を抱えつつ競技を続けざるを得なかったGiantの数年間を見れば、彼を平均的なライダーとみなす人も多かったと思います。しかし、全ての要素がピシャリとはまった時の彼の強さは、そんな「定説」を吹き飛ばすだけの力強さがありましたね。2000年のシェラネバダでは、チームメイトのRob Warnerが同国のピートの優勝を願いながら、それでもMylesにはタイトルを獲って欲しかったとコメントを寄せています。

 もう一つの特集で目を引くのは、ライディングとは切っても切れない怪我の話。意訳(?)すると、読者が遭遇した「やばい怪我」特集とでもなるのか、実際に怪我を負った人の体験談や、目撃談などがこれでもかとばかりに寄稿されており、かなり辟易するような内容にまとめられています。根本的に日本人と体の痛みに関する感じ方が異なっているのか、こんな目にあっても、よくライディングを続けるよなと逆に感心するかもしれませんけど。

 この他に、Nathan Rennieへのインタビューがかなり多くのページを使って組まれています。今年から長年在籍したYetiを離れてアイアンホースに移る事が決定しているため、彼の走りに注目でしょう。余談ながら、彼はプロテクタを一回も洗ったことがないらしい…

MAR/APR '03
 そういう時期と云うこともあって、有力選手の移籍情報や、新チームの概要がチラホラ目に付くようになりました。目立ったところではミナーがHaroに、ファビアン・バレルはKona/UKに移籍というのが、ご当地でもビッグニュースとして扱われています。その他のワールドチームの体制に大きな変動はないようですけど、バレルのKona/UK入りというのは、それまで彼が過ごしてきたWC主体の活動から、UKの国内選手権に活動の場を移すと言うことを意味しているため、ちょっと珍しい。

 選手個人へのインタビューや特集は、レース谷間の時期と云うこともあり今号ではちょっと多めになっています。パーマー、ロビー・ミランダ(BMX)、サブリナ・ジョニエ、エイプリル・ロゥヤー、そしてウチジマリョウ。余談ながら、過去を振り返るとパーマーの特集は2年おきくらいに組まれているわけで、今回のは重なる部分も多く近況報告程度の内容でした。

 あと、プロレーサーではないけれど、ポートレート風にまとめられたローカルレーサーの日常や独り言なんかも面白い。おそらく編集員が地方レースへ取材に行った時、聞いて回ったと思しき簡単な内容なんですが、某国と同様でUKのレース事情も「頂点付近」を除けば、多くの人がレースそのものを楽しんでいるようです。純粋にスリルを味わいたい、ドラッグや酒で気を紛らわせるよりは遙かに楽しい等々、読みながら妙に納得しちまいました。

MAY/JUN '03
 表紙のインパクトとは裏腹に、ちょっと内容が寂しい号でしょう。この時期になるとメーカー主催の新製品発表が行われているため、今回はアリゾナ州で行われたManitouのプレスキャンプ風景がレポートされています。個人的に最近の機材の流れについて、まったく取り残されているため細かな「説明」は省略。要約するとSP Valve使用のリアショックと、Minuteフォークが異次元の走りを約束してくれると言うことらしいです。余談ながら、新製品紹介の欄にあったチタンスプリングの販売開始と、Hopeから発売されたディスクマウントのフェイシングツール(70ポンド)等はかなり良い。

 その他、ダートバイクの歴史、スイスのスキー場でダートジャンプ(雪上だからダートじゃない?)等々が収録されていますが、一押しはトップライダーが語る「勝者の条件」でしょう。質問項目が細分化され、勝つために必要な要素、モチベーションの維持方法、表彰台を目指す理由等々、面白いところでは優勝した時や優勝を逃した時に泣いたことはあるか、と言った項目まであって各ライダーの個性が出ています。ちなみに、回答者はWC表彰台の常連さんと、UK内のトップライダー達です。だいたいが結果を気にせずリラックスして臨むのが秘訣らしく、この辺はジャンルを問わずよく言われていることかもしれません。ただ文章を読む限り、表彰台を狙うことに関して言葉とは裏腹に貪欲な人が多いとは思います、なにしろBas De Beverが語る(レースに取り組む)最大の動機付けというのが「若造をねじ伏せること」らしいです。半分冗談、半分本音のような気もするけど、意外と全部本音だったりして。

JUL/AUG '03
 かなりタイムラグがあるものの、シーオッターやNPSシリーズ(国内選手権)を皮切りに2003が始まりました。今回も競技のレポートは目白押しです。特に4XではBIKE 2003(自転車ショーと同時開催)、シーオッター、NPSの4X等々。シーオッターではDH、マウンテンクロス、スラローム等の種目があり、各種目で勝者を決めるほかに、3種目の成績をトータルで見て総合チャンピオンを選出。これを1位から順番に書いていくと、カーター、グラシア、マイキーと続き、もう「いぶし銀」メンバー勢揃い、特にマイキーは優秀選手が揃ったHaroの中にあっても監督の重みを感じさせてくれます。余談ですが、誌面の一コマを割いてサム・ヒルの写真が掲載され「こいつの走りを見逃すなよ!」という一文が添えられています。

 話は変わって、国内に目を向けるとBIKE 2003とNPS 4Xはセットで読むと面白い。4Xなんでスタートダッシュが互角ならば、次は位置取りだ!とでも云わんばかりの肘のぶつけ合いというか、グリップのぶつけ合いが誌面からビシビシ伝わってきます。特に前号(表紙)で取り上げられたピートとマーティン・マーレイの鍔迫り合いがBIKE 2003でも再現され、あのままフィニシュラインまで行ってしまうのだから、もはや芸術の域ではないかと。

 その他、WC第1戦(スコットランド)の模様も掲載。本当はこちらの方を前に書くべきだったかも。前年チャンピオンのピートは土曜日に開催された4Xファイナルで右踝を痛めてしまい、翌日のDHは患部が「グレープフルーツ大」に腫れ上がった状態で臨んだらしい。


SEPT/OCT '03
 4130からの輸送途中に行方不明となってしまった41号です、購読者の皆様にはご迷惑をおかけしました。荷物の追跡が途切れてから直ちに追加の手配をしたものの、その時点で4130にも在庫が無くなっており手の施しようがありませんでした、本当に申し訳ありませんでした。説明によると、41号に関しては本国でも発売直後に在庫が切れてしまった状況なので、今後も入荷の見込みはありませんが、どんな記事が掲載されていたのかというのは教えてもらいましたから書ける範囲で少々…。

 レースシーズンも中盤に入り、UK国内外で開催されたレースの模様を多数レポート。その中でも、NPSの第3戦とナショナルチャンプを決めるNational Championshipsがメインでしょう。NPSの方はシリーズ戦と云うことからUK内を活動の場としている選手のみが出場しているわけですが、今年はdirtとMBUKとの雑誌チーム対決というのがあるから取り上げ方も真剣です。ちなみにdirtはナイジェル・ペイジ、MBUKはウィル・ロングデンと2人とも実力的には伯仲って感じですか。一方、ナショナルの方は大荒れだったみたいです、誌面からは各カテゴリーのナショナルチャンプ選出について詳しい話が読みとれなかったものの、レースの運営方法に始まって、レギュレーションの解釈(車検か?)等々。UKではワールドチームで活躍している選手も多いので、わざわざこの日のために都合を付けた選手もいるのに、一部選手は所属チームの都合で不参加という事態が発生し、問題を深刻化させたみたいです。「こんなの茶番だ」と吐き捨ているように語った某選手の言葉が象徴的でした。

NOV/DEC '03
 ようやく03シーズンも終わり、蓋を開けてみたら南半球勢(といっても、範囲が広いけど)がひと頃のフランスのように一大勢力へ成長したと言えそうです。主な話題といえばWC最終戦(オーストリア)と世界選手権(スイス)でしょう。二つの大会は日程が9月上旬の週末ごとに連続して設定されており、WCメンバーからすると連戦となるわけですが、WC最終戦は悪天候な上に、迷走したレース運営が祟って選手の不満爆発だったようです。そんな中でシリーズチャンプを決めたのはレニー、最終戦もキッチリまとめて見事栄冠獲得って感じです。余談ながら、年齢的には若いはずなのに58〜59ページにまとめられた連続写真をみると、結構オヤジ顔…。一方、肝心の世界選手権はミナーが獲得。WCとは異なり世界選手権のタイトルは一発勝負なので、同時に行われる4XとDHを両立させるのは困難なはずなんだけど、ミナーとグラシアはそれらを両立している数少ない選手です。とはいえ4Xは「本職」が強いわけでして、決勝でのプロコップの強さは圧巻だ(彼の使用しているAuthorも必見)。個人的にはセミファイナルのレースが面白かったのではないかと思いますが。

 上記のような国外大会以外に、UK内で行われている各種シリーズ戦の模様も収録されてます。どっちかと云えば、こうした国内選手権の方が「濃い」。収録された大会では、一応dirtからするとライバル誌という感じになるMBUKのウィル監督が速く(でもライバル誌だから露出少ない)、また4xの国内選手権ではデイル・ホームズの切れ味が炸裂したようです。その他、NORBAやBMXのNo Clipsシリーズの模様など、もう書ききれないくらい。